遺言についてご存知ですか?

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1.増加する相続問題と遺言

相続財産をめぐる争いは、今後一層増加することが予想されます。このことは、相続財産をめぐる骨肉の争いを描いたテレビドラマなどからご存じのことと思いますが、家庭裁判所が取り扱う遺産分割事件が昭和47年には年間約4900件であったのに、平成元年には約7000件、平成22年には約1万3500件を超え、その解決に長期間を要していることからも十分うかがえます。

そして、この傾向に歩調を合わせるかのように、公証役場で遺言をする事例も多くなっています。全国の公証役場で作られる遺言公正証書は、昭和47年には年件約1万7000件でしたが、年々増加して昭和60年には年間4万件となり、平成3年には約4万5000件、そして平成25年には約9万6千件を超え、増加の一途をたどっています。

このように親族間に相続財産をめぐるもめ事が起こり易くなり、遺言も増えているという事は、民法が定める法的相続制度だけではそれぞれの家庭事情に応じた相続問題を解決するのには不十分なことを示していると言えます。法律は遺言によってあなたの家庭の実情にあった相続方法を決めたり、遺産分割の方法を定めたりすることを認めているのですから、自己決定の尊重の理念を活かすためにも、これからは、遺言を作成し、あなたの意思を明示して関係者に正しく伝え、相続財産をめぐる争いを未然に防ぐことが大切といえます。

 

2.なぜ遺言が必要なのか

遺言の件数が増えている理由は、いろいろ考えられます。遺言をしておかないと、相続に関する被相続人の意向が明らかでないため、法定相続人が法律で認められたあらゆる権利主張をしがちで、それにより相続をめぐる争いが激しくなることから、これを防止する必要が高くなったことが挙げられます。

戦前のわが国では家督相続制度が採られ、多くは長男が全財産を1人で相続する建前でしたから、相続争いも少なく、遺言をする者はほとんどありませんでした。戦後は法の下の平等の理念から共同相続制度が採用されましたので、遺言がないと共同相続人が必ず遺産分割協議をしなければならず、その教義がまとまらなければ家庭裁判所の調停又は審判で決めるということになっています。相続人間の争いは、この遺産分割協議のときに表面化してくるのです。

被相続人が財産を残して死亡した場合、それぞれの相続人にとってはその遺産分割協議の時こそ財産を取得する絶好のチャンスです。場合によっては、何億、何千万という値打ちのある財産が手に入るというケースもあります。相続人らの関係者は遺産分割の機会を利用して自分の為に少しでも多くの財産を得たいと思い、各自が自己の権利を主張することになりがちです。

被相続人としては、折角残した財産ですから、子孫が仲良く分け合い、互いに助け合って暮らしていってほしいと願う気持ちで一杯と思われますが、その気持ちとは裏腹にその財産がかえって骨肉相争うもとになることもあるのです。民法は、相続人となる者の範囲やその法定相続分を定めていますが、これと異なる被相続人の意思が優先しますから、その相続人各自が必ずしも、その法定相続分通りに財産を相続できるわけではないことに留意する必要があります。

そこで、自分の死後、遺産をめぐり子供たちや親族間に起こる争いを未然に防ぐために、遺言をして、あらかじめ各相続人の間の遺産の取り分や分配の方法を具体的にはっきりと決めておくのがよいのです。これが、遺言を必要とする一つの理由で、実際に、そのようなことを考えて遺言をする人が増えています。

 

3.特に遺言が必要な場合

遺言が特に必要な場合について、具体例をいくつか挙げてみることにします。

・夫婦の間に子供がいない場合

夫婦間に子供がなく、夫の遺産のすべてを長年連れそった妻に相続させたいときは、遺言が必要です。遺言がなければ、相続人が妻と夫の兄弟姉妹の場合は、妻の相続分は4分の3で、残りの4分の1は夫の兄弟姉妹が相続することになるからです。

・息子の妻に財産を贈りたい場合

息子の妻は、夫の両親の遺産については、全く相続権がありません。例えば、夫に先立たれた妻が、亡夫の親の面倒をどんなに長い間みていたとしても、亡夫との間に子供がいないときは、亡夫の親の遺産は、すべて亡夫の兄弟姉妹が相続してしまいます。このような場合には、遺言で息子の妻のために然るべき遺産を贈る(これを「遺贈」といいます。)ようにしておくのが思いやりというものです。遺言は遺された者へのメッセージといえるでしょう。

・特定の相続人に事業承継、農業承継をさせたい場合

個人事業者や会社組織になっていても、その株式の大部分を持っている人の場合にその事業を特定の子に承継させる必要があるときがあります。例えば、その子が親の片腕となって、事業の経営に当たっている場合には、その事業用財産や株式が法定相続により分割されると、経営の継続が保てなくなることがあります。法定相続人の間で分割協議をめぐって争いが生じることもあります。農業経営についても同じような問題があります。このようなことを防ぐには、遺言をして事業承継、農業承継に支障のないように定めておくことが大切です。

・内縁の妻の場合

「内縁の妻」とは、単なる同棲者ではなく、社会的には妻として認められていながら、ただ婚姻届が出されていないだけの事実上の妻のことです。このような内縁の妻には、夫の遺産についての相続権は全くありません。したがって、内縁の夫が内縁の妻に財産を残したいのであれば、遺言で遺産を贈る配慮をしておくことが必要です。

・相続人が全くいない場合

相続人がいない場合は、特別な事情がない限り、遺産は国庫に帰属します。そこで、遺産を親しい人やお世話になった人にあげたいとか、社会福祉の団体・菩提寺・教会等に寄付したいという場合には、その旨を遺言しておく必要があります。

・その他

相続人間で紛争が予測される場合(先妻の子供と後妻との折り合いが悪い場合などもこの場合に含まれるでしょう。)相続人が外国居住している場合、遺産を公益事業に役立てたい場合、知人や友人に遺産を贈りたい場合、相続権のない孫に遺産を贈りたい場合、身体障害者である子供により多くの遺産を残したい場合などは、あらかじめ遺言で、相続人間の遺産の配分方法や相続人以外に特定の人や団体に遺産を送るなどをはっきり決めておくことが必要です。

 

4.遺言は誰でもできる

遺言とは、一口でいえば、個人の生前の意思をその死後に実現させるための制度で、満15歳以上の者であれば、誰でも自由に遺言することができます。遺言は、家庭の事情、家業の実態などに合わせて、相続人以外の個人、法人、協会、公共団体等に対し遺産を与えたり寄付したりすることができるなど、多様な機能を持っています。

日本では、民法の法定相続に対して遺言があれば遺言が優先するのですから、これからは「財産を残すなら、遺言を残せ」ということが常識となるでしょう。遺言がない場合の法定相続は、遺産分割協議によって行われますが、遺産分割協議の場では、既に記載したように相続人が各自自分に都合のよい主張をしがちで、話合いのつきにくいことが少なくありません。自分の子供たちに限って仲たがいをするはずがないという考え方は、一家の大黒柱である被相続人である自分の死後には通用しないと心得るべきでしょう。

遺言をしておけば、遺産にからむ争いを少しでも未然に防止することができますし、遺された相続人も遺言者の意思にそった納得のいく遺産の配分を円満に実現させることができます。

5.遺言というもの

遺言は、一般的には、死にぎわに残す言葉というようなイメージを与えるようですが、法律でいう遺言は、必ず書面に書いたものでなければなりません。したがって、本人の声で、遺言の内容を録音テープに吹き込んだものでも、テープは書面ではありませんから、遺言としての法律上の効力は認められません。

法律上の遺言は

・遺産の処分に関係するもの
・婚外子の認知
・相続人の廃除あるいはその取消し
・未成年者の後継人の指定

そのほか、人の身分に関係するものなど法律に決められた事項についての意思表示でなくてはなりません。もっとも、法律上の遺言事項以外に『付言事項』として、そのような遺言をした遺言者の率直な気持ちを相続人に伝える記載が付加されることは少なくありません。

また、法律上の遺言は、書面にしておかなければならない上に、その書面は法律で定められた一定の方式を備えていなければなりません。そうでないと、法律上の遺言としての効力がありません。この点も、世間で言う「遺言状」、「書き置き」、「遺書」などとは少し違います。

法律上の遺言が、なぜこのように方式を大切にするかといいますと、遺言は、その人が死亡したときにはじめてその効力が発生するものですから、その方式を明確にしておきませんと「死人に口なし」で、後になって問題が起こる危険があるからです。

また、遺言は遺言する本人がしなければならないものです。ですから、他人を介して遺言したり、代理人に頼んで遺言をしてもらうことはできません。

6.遺言の方式

法律は、遺言について厳格な方式を定めますが、同時になるべく遺言しやすいように、普通の場合の方式として

・公正証書による遺言
・自筆証書による遺言
・秘密証書による遺言

の3つの方式を定めています。

このほかに、特別な場合の方式として

・死亡が危急に迫った者の臨時遺言
・伝染病で隔離された場所にいる者の遺言
・船舶中にいる者の遺言
・遭難船中にいる者の臨終遺言

などを定めています。

しかし、最も多く利用されている方法は、公正証書遺言と自筆証書遺言です。なかでも、公正証書遺言を作っておくのが、最も確実な方法であるといえます。

7.公正証書遺言の作り方

公正証書で遺言することは、決して面倒なことではありません。遺言をする本人が公正役場に行って、公証人に対して、自分が考えている遺言の内容を直接告げればよいのです。公証人は、本人の精神状態が正常であることを確認した上、本人が告げた内容を法律的に間違いがないようにまとめて書面(公正証書)にしてくれます。このように、遺言をするには、本人の精神状態が正常であることが必要ですから、病気などにより、判断能力や表現能力が衰えてしまった後では、遺言をすることはできなくなります。したがって元気なうちに公証役場に行くことをお勧めします。なお、遺言者本人が病気などで役場へ行けないときには、公証人が自宅や病院まで出張してくれます。

公正証書を作成する公証人というのは、①裁判官、検察官、弁護士の資格を有する者、②法務局長等多年法務事務に携わり①の者に準ずる学識経験を有する者の中から公募し、採用試験をして法務大臣が任命する国の公の機関です。

公証人に公正証書遺言の作成を頼む際には、あらかじめ

・本人の印鑑登録証明書(発行から3か月以内のもの)
・財産をもらう人が相続人の場合は戸籍謄本、その他の場合は住民票(あるいはこれにかわる正確なメモ)
・遺言の内容が土地、家屋、マンションであるときは、その登記事項証明書(又は登記簿謄本又は権利証等)、土地と建物の固定資産評価証明書(又は固定資産税納税通知書に添付された課税証明書)
・証人になってくれる人を2人決め、その住所、職業、氏名及び生年月日を書いたメモ(又は住民票)

(なお、公証役場に紹介してもらう場合は不要です。)

などを用意して持参することです。くわしいことは、あらかじめ最寄りの公正役場に相談してください。

遺言公正証書は、遺言者が公証人に対して遺言の内容を話し、公証人がそれを筆記して出来上がるのですから、文字を知らない人でも遺言をすることができます。また、口がきけない人も筆談や通訳人の通訳によって遺言内容を伝え遺言することができます。そして、遺言の筆記が終わると、公証人は遺言者本人と立ち会った証人にそれを読んで聞かせます。これは、筆記の内容が遺言したことと違っていないかどうかを確かめるためです。耳が聞こえない人でも、通訳人の通訳や遺言書を閲覧することによって確認することができます。間違いのないことを確かめたら、遺言者と証人がそれぞれ署名押印します。もし、遺言者が病気等で自分の氏名を書けないときは、公証人が代わって遺言者の氏名を書いてくれます。

なお、このとき遺言者が使用する印鑑は、原則として、印鑑登録をした実印でなければなりません。そのために、遺言者は、その印鑑が確かに本人の実印であることを証明するために印鑑登録証明書を持参する必要があるのです。ただし、証人2人の印鑑は実印でなくても認印で差し支えありません。したがって、証人について印鑑登録証明書は不要です。

 

8.証人について

公正証書遺言には、必ず2人以上の証人に立ち会ってもらわなければなりません。証人になれるのは未成年者以外なら誰でもよいのですが、遺言内容と利害関係のある人は証人になることはできません。すなわち、遺言者の第一順位の推定相続人及び受遺者並びにそれらの者の配偶者と直系血族の人などは証人になれません。しかし、それ以外の親族や他人なら構いません。

信頼している親しい友人とか知人、あるいは銀行員、司法書士、行政書士、税理士、弁護士などが適任です。適当な人がいないときは、公証役場で紹介してくれることもありますので、相談するとよいでしょう。

遺言に立ち会う証人というのは、遺言者の精神状態が正常であり、その自由な意思によって遺言が述べられたことなどを含めて遺言公正証書が正しい手続きにしたがって作成されたものであることを証明する役割を担っています。

どうしても証人が得られないときは、証人を必要としな「死因贈与契約」という方法もありますので、公証人に相談してみてください。

 

9.遺言の執行とは

遺言の執行とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に遺言の内容をその通りに実行することです。

遺言執行者は

・遺言で指定された者 又は
・家庭裁判所により選任された者 がなります。

遺言執行者は、遺産の預貯金債権の名義変更、払戻しのときなどに重要な役割を果たしてくれます。したがって、誠実で信頼できる人でなければなりません。場合によっては、遺言によって遺産を貰う人(相続人又は受遺者)を遺言執行者とすることもできます。相続人が数人いる場合は、財産を最も多くもらう人を遺言執行者に指定しておくと、いろいろな事務処理をスムーズに取り運ぶことができるようです。

遺言執行者を必要とする場合、これを遺言で決めておきませんと、遺言者が死亡してから家庭裁判所で決めてもらうことになり、手数と時間がかかりますので、あらかじめ遺言の中で決めておくのがよいでしょう。このように、遺言執行者を指定して公正証書遺言をしておけば、遺言者の意思に沿った財産承継を迅速かつ簡明に実現することができます。

 

10.自筆証書遺言の作り方

自筆証書で遺言をするには、遺言者が遺言書の全文と日付をすべて自分で書き、署名押印すればよいのですから、字の書ける人ならば誰にでもできる、簡便な方式の遺言です。

しかし、全文自筆でなければなりませんから、パソコンやワープロ、タイプライターなどで浄書したものや、他人に書いてもらったものは、たとえ本人の署名押印があっても無効です。その上、内容を変更、訂正する場合にも面倒な方式によらなければならず、法定の方式に反すると無効となることがあります。そこで、書き損じたときは、はじめから書き直した方がよいでしょう。

また、この自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、遺言書の保管者又は発見者は、遺言者の出生時から死亡時までの戸籍謄本等をはじめ、相続人の戸籍謄本等を準備し家庭裁判所に申し出て「検認」の手続を受けなければなりません。

「検認」の手続は、遺言書が偽造されたり、変造されたりするのを防ぐために家庭裁判所が行う検証手続のことをいうのです。ですから、遺言書の有効であることや無効を判定する手続きではありません。そのため裁判所では、裁判官の列席のもとで相続人全員と利害関係人に立会いの機会を与え、遺言書の外観や記載内容等の現状を確認して書記官が「検認調書」を作成します。

遺言書の保管者又は発見者がその遺言書を裁判所に提出するのを怠ったり、検認を受けないで遺言を執行したり、封印のある遺言書を裁判所外で開封したりすると、過料の制裁を受け、面倒なことになります。

しかし、公証人の作成した遺言公正証書は、偽造や変造のおそれもなく、また、検認というような面倒な手続きをとる必要もありませんし、公証人が作成するものですから、方式に反するなどの理由で無効となることも避けられます。

 

11.秘密証書遺言の作り方

この遺言の方式は、遺言者が遺言の文言を書いた書面に署名押印し、これを封筒に入れて密封し、遺言書に押した印と同じ印で封印しておけばよいのです。

この遺言書は、その内容は、他人に書いてもらってもよいし、パソコンやワープロを使用して作ってもよいのですが、署名だけは自分で書かなければなりません。

遺言者は、その封筒を封印したまま公証役場に持参し、それを公証人に差し出し、2人以上の証人に立ち会ってもらって、その封印の中身が自分の遺言であること、その遺言を書いたのが誰であるのか、その住所、氏名を申し述べます。

公証人は差し出された封筒に日付を書き、さらにこれに遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名押印して、その封筒を遺言者に返します。

この秘密証書遺言は、遺言者本人が保管し、遺言者の死亡後、家庭裁判所による検認手続を経なければなりません。その点は自筆証書遺言の場合と同じです。また、遺言者が印鑑登録証明書を持参し、2人以上の証人を立ち会わせなければならないことは、公正証書遺言の場合と同じです。

この方式をとるのなら、公正証書遺言をした方がはるかに確実であり、安全といえます。したがって、この方式による遺言をする人はあまり多くありません。

 

12.遺言の撤回または変更

遺言者は、いつでもその遺言を撤回したり、変更したりすることができます。遺言をしたあとで遺言者をめぐる周囲の事情や、遺言者の心境にいろいろ変化があることは当然です。そのような場合には、後日遺言を作成することによって、先にした遺言を自由に撤回したり、変更したりすることができます。一度遺言をしたからといって、一生涯それに拘束されることはありません。

 

13.遺言と遺留分

遺言は、自分の財産を、その死後にどのように処分するかをあらかじめ決めておく制度ですから、本人の自由意思によってどのように決めても構わないわけです。

したがって、極端な場合には、たとえば、全財産を妻子にはやらないで、自分が世話になった特定の人に遺贈するという遺言もあり得ますし、このような遺言も遺言として有効なわけです。しかし、この場合、一銭も遺産の分配を受けられない妻子が一家の主人に先立たれ、たちまち路頭に迷うことになっては困るわけです。そこでこのような場合に妻子等の一定の相続人を保護するためにその者に分配される遺産の割合を最小限度確保しようというのが遺留分の制度です。

この場合、妻子はこのような遺言のあることを知ったときから1年以内に相続財産の半分について減殺(げんさい)の請求により取り戻すことができることになっております。しかし、1年以内にこの請求をしなければ、この権利は、時効によって消滅します。

いずれにしても、あらかじめ遺留分を考慮したうえで、遺言を作成しておくことが賢明です。しかし、実際には、多くの場合すでに遺産の前渡し分があったりして、遺留分の計算方法はなかなか複雑で困難です。

したがって、あとになって争いにならないように、遺言は誰が見てもそれが最良だと思われる納得のいくものであることが望ましいでしょう。

 

14.安全確実な公正証書遺言

遺言というと、何となく老人のすることのように思われていますが、満15才以上なら未成年者もできます。しかも、親権者の同意は要りません。

また、どんなに仲の良い夫婦でも同一の公正証書で共同の遺言をすることはできません。遺言は、遺言をすることも、それを撤回することも各自がしなければならないものだからです。

遺言というのは、本人の自由意思に基づいてするものです。したがって、騙したり、脅したりして無理に遺言をさせた者、又はその反対に遺言をするのを邪魔した者、遺言書を偽造したり、変造したり、破り捨てたり、隠したりした者は、刑法上の処罰を受けるほか、民法上も相続人としての資格を奪われ、また、財産を遺贈されることになっていた者もその権利を失ってしまいます。

公正証書遺言の場合には、これらの点を公証人が十分にチェックした上で、本人の自由意思に基づく本当の気持ちを公正証書に記載しますから、あとで問題が起こるようなことはありません。なお、特に法律問題等で複雑なものについては、あらかじめ弁護士の助言を受けておくこともよいでしょう。

遺言公正証書の原本は、公正役場で責任をもって半永続的に保管(別に原本を写した正本と謄本を遺言者に交付)しますから、遺言書が紛失したり、隠されたり、改ざんされたりする心配は全くありません。更に、遺言検索システム(全国では平成元年以降を登録)により、被相続人の死後であれば、相続人など利害関係人は、公正証書遺言があるかどうかを全国どこの公証役場からも問合せすることができます。

また、この度、遺言公正証書についてはその原本を電磁的記録で保存することになりました(全国では平成26年4月から)ので、原本や正本・謄本が大規模災害などで滅失した場合でも復元が可能になりました。ですから、後になって、誰かが遺言があることを争ったり、遺言の内容を争ったりすることが困難になります。

したがって、公正証書遺言は、最も安全で確実な遺言の方式であるといえます。

 

15.新しい型の遺言

民法に定められている遺言は、財産や身分に関することですが、最近これ以外に個人の生前の意思を死後に実現させるために、新しい型の遺言が行われるようになりました。

その1は献体の遺言、その2は角膜移植・肝臓移植等臓器提供のための遺言です。

献体とは、自分の身体を、死後、医学教育のために解剖体として提供すること、角膜移植・腎臓移植とは、死後、他人のために自分の角膜や腎臓を移植することです。

公証役場では、これらの新しい型の公正証書遺言についても、いっそう厳粛に受けとめて対応しております。

 

16.老後の安心設計 任意後見契約を!!

遺言と同様、老後の安心の手段として任意後見制度があります。任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、例えば認知症等によって判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約、すなわち任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。

遺言の作成とともに、任意後見契約を考えてみませんか。

 

17.尊厳死宣言も公正証書で!!

病が治る見込みがなく、死期が迫っている場合、自分の意志で治療を打ち切って「延命措置はしない」自然な死を迎えたいとの意思表示、それが「尊厳死宣言」です。これを、公正証書あるいは公証人の認証を受けた文書として残されたらいかがでしょう。

 

18.遺言公正証書作成費用

遺言公正証書を作成する場合の費用は、公証人手数料令に定められた証書の作成手数料とその他の費用です。公証人手数料令の一覧表はこの巻末にありますが、遺言の場合について説明しましょう。

証書の作成手数料は、遺産の額(債務等の消極財産は考慮しません。)により、後記「公証人手数料」の公正証書の作成欄の手数料額となりますが、その遺言により相続する人や遺贈を受ける人・団体等が複数の場合は、それぞれごとにその手数料額を計算します。祭祀継承者を定めた場合は、これも一つの行為として、1万1000円が必要となります。

公正証書の枚数が4枚を超えたときは、枚数加算手数料として超えた分1枚につき250円が加算されます。

遺産の総額が1億円までの場合は、上記で算出された手数料額に1万1000円の遺言加算手数料が加算されます。

通常は、遺言公正証書の正本と謄本各1通を作成して交付しますので、その各通につき1枚250円の手数料が必要となります。

病気等で公証役場に出頭できない人の場合に公証人が自宅や病院に出向いて作る際には、病床執務加算手数料が必要となり、上記の証書の作成手数料にその半額が加算されます。

公証役場外に出向いて作成する場合には、日当1万円(4時間以内の場合)と交通費の実費が必要となります。

 

19.ご相談は最寄りの公証役場へ

公証人は、法律の専門家で、法務大臣から任命された公の機関であり、法律によって守秘義務がありますから、遺言の内容は勿論のこと、誰が相談に来たとか、誰が遺言に来たとか、他に洩らすようなことは一切ありません。

また、公正証書は公文書ですから、遺言に限らず、金銭や土地、建物の貸借などについての契約関係を公正証書としておきますと、たとい、民事訴訟になっても公文書としての強力かつ確実な証拠となります。したがって、後日になってその成立を争うことは極めて困難です。金銭債務等については、公正証書により強制執行することができるように作成することもできます。

公正証書作成に関する相談は無料です。気軽に公証役場へ出向き、安全確実な公正証書遺言をお作りになることをおすすめします。

公証人は、全国の主要都市に配置されています。巻末に全国公証役場の一覧表があります。また、遺言については、日本公証人連合会のホームページ(http://www.koshonin.gr.jp/)をご覧ください。

以 上

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